日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2002年 -2003年
代表者 : 浅川 潔司; 秋光 惠子; 夏野 良司; 古川 雅文; 石橋 尚子; 秋光 恵子
本研究は、AD?HDやLDあるいは高機能自閉症などのハンディキャップを有する幼児児童の張った鵜を援助するための支援が当該児童の発達と学校適応にどのような効果を持つのかという問題を検討することを主たる目的とした。又、これに加えて、子どもたちを支える当事者である保護者及び小学校や幼児教育機関の教諭・保育者は外部環境にある専門家の援助がどの程度も止められているのかという問題も合わせて検討された。個別の支援にあたっては、スクールカウンセラーと実習スタッフに加えて担任教師と障害児学級担当教師及び管理職からなるスタッフ会議が設けられ、そこでプログラムが検討された。この過程を経て個別の学習支援、保護者との共同的な連携と支援、専門機関との連携、および定例のスタッフ会議が実行に移されたのであった。本研究の支援対象となったのは小学4年生の男児1名であり、低学年時より言語性LDが疑われ、校内徘徊や級友間の種々のトラブル、授業への不参加を呈していた。介入時の彼は、原学級と障害児学級の間を行き来している状態であり、支援スタッフには両学級の担任、学支援担当教師、管理職とスクールカウンセラー及び実習生が参加した。介入開始は研究初年度の6月であり、この介入は2年次の12月まで継続してなされた。1年半に及ぶ個別教育計画に基づくチーム援助の成果としては、当該児童を取り巻く大人の間に相互理解が生まれたこと、ひいては各自の役割認知が進み相互補完的に役割が遂行された点にあった。その結果、児童の側にも、本人の生活分野ごとの能力や適性が共通的に理解され始め、子ども中心の視点から個別教育計画が再構築され、個人を生かす観点から評価がなされ、授業も展開され始めたのであった。それらとともに、問題とされた行動も減少していったのである。
本研究では介入に関する事例的アクションリサーチと平行して、学校の教師が軽度発達障害の児童が引き起こす問題行動についてどの程度学校外の利用可能な専門家の援助を必要とするのかという問題についても教師対象の質問紙調査法によって検討された。その結果によれば、まず小中学校の教師は、これらの児童が示す問題行動は大きく3種類に分かれて認知されることが示唆された。すなわち、不注意行動、衝動行動及び集団行動の困難さである。2(小・中)×2(子どもへの態度:肯定的-否定的)の分散分析の結果、不注意行動に関しては中学校教師群が小学校教師群よりも専門家の援助をより強く求めていることがわかった。他の行動については、いずれの主効果も交互作用も有意ではなかった。