日本学術振興会:科学研究費助成事業 奨励研究
研究期間 : 2016年04月 -2017年03月
代表者 : 真田 穣人
本研究では, 児童の被受容感, 児童同士の関係性と児童の学習観に着目して協同学習の導入が児童の学習意欲に影響を及ぼすプロセスを検討し, 小学校における協同学習の進め方と学習意欲向上についての知見を得ることが目的であった。調査は小学4年生を対象に, 10月(協同学習実施前)と2月(協同学習実施後)に実施された。主な結果は以下の通りである。
(1)協同学習実施群は協同学習実施後に, 被受容感, 学習意欲尺度の下位尺度である「学習効力感」得点, 協同作業認識尺度の下位尺度である「協同効用」得点が高くなっていた。一方, 従来型の一斉授業実施群では, 被受容感に変化は認められなかったが, 「学習効力感」得点, 「協同効用」得点に低下が認められた。従来型の一斉授業実施群に比べて協同学習実施群は, 受容的な環境の中でわからないことも気軽に聞き合うなど級友と学び合うことで, 学習効力感が高まることが示唆された。また協同的な学習をすすめるなかで, 協同して活動に取り組むことの効果や重要性を体感することで, 学習観が変化する可能性が示された。(2)学習効力感を従属変数とし, 協同学習実施前後の被受容感の差と時期を独立変数とする2要因混合計画による分散分析を行ったところ, 被受容感の実施前後の差が高い群, 中程度の群は学習意欲が高まっていたが, 差が低い群に学習意欲の変化は認められなかった。このことから, 協同学習の導入によって被受容感が高まった児童の方が, 学習意欲も高まることが明らかになった。(3)協同学習実施前後の「協同効用」得点の差と被受容感, 「学習効力感」得点の差に中程度の相関が認められた。
以上のことから, 協同学習の導入によろ学習意欲の向上のためには, 児童が仲間から受け入れられているという思いがもてるような受容的な環境, 協同的な活動の効果や良さの実感が重要であることが確認されたといえる。