日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2020年04月 -2024年03月
代表者 : 丹所 忍; 三科 聡子; 門脇 弘樹; 韓 星民
本研究の目的は、先天性視覚障害幼児児童生徒を対象とした歩行指導プログラムを開発し、提案することである。日本には、重複障害を含めた先天性視覚障害幼児児童に対する発達段階に応じた歩行指導プログラムが存在しない。また、視覚特別支援学校では、歩行指導に関する専門性の高い教員が不足していることが課題となっている。本研究は、こうした課題の改善策を検討し、教育の場において一助となるよう4年間で遂行するものである。
2021年度は、1)先天性視覚障害乳幼児の発達、特に運動発達と空間の理解について、指導実践事例に基づき整理すること、2)海外(米国)における重複障害のある先天性視覚障害児への歩行指導実践研究を収集して整理すること、3)日本の盲学校と外部専門家(歩行訓練士)が連携・協働して行う歩行指導に関する事例収集とオンライン面接調査を実施すること、を実施し、一定の成果を得ることができた。あわせて、全国盲学校を対象とした歩行指導に関する質問紙調査の実施に向けて文献収集と調査項目の検討などの準備を行った。
現在、3)「面接調査」の結果を分析しているところであるが、現時点では連携・協働した歩行指導により以下のような成果と課題があることがわかった。まず、盲学校と外部専門家(歩行訓練士)が連携・協働して歩行指導を行うことにより、盲学校の教員の歩行指導に対する認識が向上し、専門性が向上するという成果がみられた。しかしながら、重複障害児童生徒や幼児に対する歩行指導については、外部専門家(歩行訓練士)であっても、専門書等が少なく指導経験もないことから、指導・助言に苦慮しているという課題があった。今後、詳細に分析を進め、投稿論文としてまとめていく予定である。